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2013年3月

2013年3月20日 (水)

「基礎」と「基本」とは?

世界選手権でのキム・ヨナのジャンプを見て、一番に肝を冷やしたのは、浅田真央選手の指導陣ではないかと思う。真剣な話、私はそうであってほしいと思う。

ヨナのトゥジャンプをコマ送りで繰り返し見返したが、明らかに、”大人のジャンプ”であった。塩原アナの言っていた、「10代の自分に聞いてみたい」という浅田選手とは大違いであろう。

大人のジャンプとは、しっかりと踏み、加速を利用して身体を飛ばすという意味である。このブログに何遍も書いたが、踏み込みによって加速するのがスケートなのである。それは、ボートや水中翼船が進行方向と反対側を重くするとへさきがあがって進みやすくなる原理に似ている。スケートのブレードが前後にカーブを描いているため、進みたい方向に向かって後ろ側(フォア滑走なら踵側、バック滑走なら爪先側)に重心を置けば、自然と進んでいく構造になっているのである。だから、置くべき位置に重心を置けば、氷上では加速する。

間違っても、加重がブレーキとなることはないはずである。もちろん、加重する場所を間違えてブレーキになることはあるだろうが...。

キム・ヨナがルッツの前に、左のバックインエッジで助走に入り、バックアウトへエッジを変えてからしっかりと踏み込んで真っ直ぐにトゥを突いたのを見て、「我が意を得たり!」と胸がすく思いがした。あれだけ悠然と、十分な助走時間をとり、あれだけしっかりと構えてのトゥ系ジャンプを見ても、まだ、佐藤コーチは持論に拘るつもりなのだろうか。

敢えて記すが、本物の前に偽物は砕け散ったと、私は言いたい。

もしも、浅田選手が基礎を見直したいうアナウンスが本当であるのなら、次のことを私は疑問に思う。

 ・ルッツでトゥを突く前から上半身が半身(はんみ)を保てないのはなぜか?

 ・ジャンプの踏切り時に両腕が遊んでいるのはなぜか?

 ・ジャンプの離氷後に、両腋が開いているのはなぜか?

 ・ジャンプの始めから終わりまで、緊張感に乏しいのはなぜか?

「力で跳ばず、タイミングで跳ぶ」という指導の影響が、上の四つの疑問の答えではないのであろうか?余計な力を使わないのはもちろんだが、コントロールすべきところをコントロールし、締めるべきところを締めなければ、跳べるはずのジャンプも跳べなくなる。大人になるということは、体格が大きくなり、体重が増えるということである。それを受け入れずに、滑走の技術でジャンプをいぢろうとしても、無理があるのではないか。

助走時の滑走スピードを上げ、踏み込まずにそのスピードで跳ぶというのは、私は違っていると思う。助走時ではなく、踏み込みによってスピードを得て、その勢いで跳ぶのが理想ではないだろうか。ジャンプ前に踏み込まなければ、エッジは氷を捉えないのだから、ジャンプが抜けやすくなる。また、踏み込みを意識しなければ上半身を正しい位置に置くこともできないし、だとしたら、跳んで速やかに両腕を胸の前に畳むこともできない。この、”腕を締める”というジャンプの基本中の基本の動作が、実際には困難であることは、浅田選手のジャンプを見れば容易に想像がつく。このことも以前のブログで記したが、今回の世界選手権で、何も改善されていなかったことがわかった。

そんなことを考えながら、ある仮説に行きついた。浅田選手は、左脚が弱いのではないか、あるいは、右脚が極端に強いのではないか、ということである。ルッツでエッジエラーをとられるのは仕方ないとも思うが、トゥを突く前から上半身が開いてしまうのは、あまりにおかしい。左のバックアウトでの滑走が苦手なので、滑走中に膝を曲げるとインに入ってしまうのかと思わずにおれないのである。

その真偽はわからないが、「白鳥の湖」のステップシークエンスを、そのような観点から見返して感じたことがある。難しいターンのほとんどを右足でこなしているということである。ツィズルやフォアからのターンで左足を使っているのももちろんあるが、難易度が高かったり、上下動が激しかったりする動作は、右軸の方が多いように見える。少なくとも、左のバックアウトエッジを有効に使った部分は、私が見る限りではなかった。

私はフィギュアスケートの専門家ではないし、ルールについても全然勉強していない。なので、浅田選手のステップワークがどう評価されるべきかはわからない。でも、自分の考えとして確信に近いものとして記せるのは、彼女には極端な左右差があるということである。

もしも「基礎」ということを考えるのであれば、このような左右差こそ、改善の対象にすべきだったのではないか?トゥを突くまで半身を保てないルッツを見せられて、彼女は基礎を見直したなどと、信じる方が無理である。むしろ、基礎を犠牲にしても得意な面を伸ばす方策をとったと説明された方が、私は納得できる。フィギュアスケートはスポーツである。スポーツには共通した、「基礎体力」というものがある。筋力、持久力、調整力がその柱だと思う。無駄な力を使わずに正しい動作ができるのも、そういう基礎体力の賜物であろう。そういう体力トレーニグを、浅田選手がおろそかにしていたとは、私は思わない。フィジカルトレーニングのコーチも居ただろうし。しかし、氷上の基本動作(ジャンプで軸を締める、片足滑走中に姿勢を保ったり変化させてもバランスを保持できる、フリーレッグや両腕を伸ばし続けたり軸に引き寄せたりする、など)で要求される基礎体力について、陸上スタッフがどこまで理解できているのか、そこが疑問なのである。

私なりの理解の仕方なのだが...「基礎」と「基本」とは違うと考えるのである。

基礎は体力であり、基本は動作であり、基礎は陸上でも水中でも、氷上でも求められ、育成できるスキルであるのに対し、基本はそのスポーツの場(スケートなら氷上、サッカーならフィールド)で求められ、育成されるスキルであると考えている。

なので、浅田選手についてアナウンスされてきた「基礎」の見直しとは、私の理解では、スケートの「基本動作」の見直しであり、数ある「基本」のうちの一部のおさらいだったのではないだろうか。そう考えると、次の問題が心に浮かぶ。

 ・ルッツでの上半身のバランス保持や軸の引き締めなど、ジャンプで求められる「基本」は見直されたのか?

 ・氷上で求められる「基本動作」を改善するために、陸上での「基礎体力」のプログラムを変えていく試みは、されていたのか。要するに、氷上のエキスパートである佐藤コーチと、陸上トレーニングを担当する(であろう)フィジカルコーチとの間の意思疎通は円滑であったのか。

浅田選手の背中や胸の筋肉の付き方をみると、フィジカル的に成功しているとは思えない。また、基本動作を意識して、繰り返しトレーニングしてきたとも、私には信じる根拠が乏しいのである。怒涛のステップシークエンスを見ても、「応用問題は得意なのね...」と思えるだけである。

塩原氏のアナウンスに反応して言えば、10代の浅田選手は、決して何も考えておらず、ただ楽しく滑っていただけではない。彼女がいかに努力を惜しまず、地道な練習を厭わなかったかは、当時の山田コーチのインタビューにも記されていると記憶している。確か、「努力する天才」と評されていたと思う。でも、佐藤コーチからのアナウンスでは、何をどう、努力しているのかが不明瞭である。基本的なスケーティングを見直し、ジャンプを一から見直していると言われているが、空中でのジャンプの軸の曲りは顕著になるばかりだと、私は感じているのだが...。今シーズンの快進撃は、佐藤流のジャンプの跳び方に、浅田選手がやっと慣れただけではないのか?トリプルアクセルを取り戻しつつあるのは朗報だし、2A-3Tも素晴らしいと思う。でも、3-3なくして世界で戦えるのであろうか。

なぜ、セカンドジャンプに3Tを入れないのか、おそらく、ファーストジャンプからの着氷スピードに左脚がついていけないからではないか?だから、右脚だけで跳ぶループでないと、セカンドのトリプルジャンプの計算が立たないのではないかと想像する。もちろん、2Tなら別だが...でも、それなら基礎点の高い2Rで良いし。

私の心配が杞憂でなければ、このオフシーズンに、彼女の左脚の筋力強化は課題とされるべきであろう。そして、ジャンプの基本動作を、氷上だけではなく、陸上でもおさらいすべきではないだろうか。そして、陸上スタッフもその動作の性質を理解し、選手と氷上での指導者とコミュニケーションをとってほしい。

なにより、過剰なステップシークエンスよりもジャンプの基本を重視した方が、安定した戦いができると思うのである...。

2013年3月17日 (日)

世界選手権でわかったこと

一言で言ってしまえば、浅田真央選手の3年間は民主党政権みたいなものだったということだろう。

キム・ヨナは圧倒的だった。一見したところ、トゥ系ジャンプの軸は太くなったし、回転も緩やかになっていた。バンクーバー以前とは違う質のジャンプだったと思う。でも、安定した着氷をしていた。その答えこそ、本来、浅田選手が目指すべきものではなかったのだろうか?ヨナの充実した背中の張りを見て、彼女が努力すべきところを努力し、鍛えるべきところを鍛えたのだと感じた。

浅田真央とキム・ヨナ、どちらがアスリートと呼ばれるのに相応しい身体つきだったのか、私はヨナだったと思う。

以前も記したが、今季の浅田選手のFSのプログラムは、私は良くないと感じている。結果的には点数も出ているし、SP6位から3位に順位を上げたのは、素晴らしいことだと思う。昨シーズンよりも、はるかに良い結果ではないだろうか。でも、演技途中で幾つかのジャンプが抜けてしまうことは、浅田選手のお約束になってしまった。佐藤コーチの指導を受け始めた1年目のように、簡単に転んでしまうことはなくなったが、その代償として、スッポ抜けが目立つようになったのではないだろうか。トリプルアクセルも世界選手権では不発であったし....バンクーバーから進歩したものがあったのだろうか?

確かに、スケーティングは美しくなったかもしれない、ステップは細やかでスピーディになったのかもしれない。でも、それが浅田真央のチャームポイントなのか?基礎の改善でジャンプの助走をスムーズにし、それが3Aを含むジャンプの改善につながったとアナウンスされているが、助走速度を上げ、踏み込まずに跳ぶことで、空中で軸をとるタイミングが狂うのではないかと、私はこのブログにも記していた。

ジャンプの改善は、スケーティング云々ではなく、上半身の強さとシャープさ、それに腰の安定性で図るべきなのではないだろうか。氷上でチョコマカと動けば道が開けるものではないように感じる。もちろん、アイスリンクでの練習を欠かすことはできないが。

観客は、そしてジャッジも、力強いスケーティングを待っているように、私には感じる。

しっかりと氷を踏みしめ、身体の芯から振り絞るようにしてエッジに伝えた力で押し出されるような、そんなスケーティング、そしてステップ・ターンを評価するのではないだろうか。「白鳥の湖」の終盤の怒涛のステップシークエンスが凄いのはわかる。でも、素晴らしいとは、私は思わない。あの曲に期待するのは、左足一本で軸を保ち続ける強靭でしなやかなフェッテであり、過剰なデコレーションではないと思うからである。フィギュアスケートでフェッテを表現することは難しいが、タラソワの振り付けからは、黒鳥の最大の見せ場へのオマージュのかけらも無い。あそこまで難しくする必要はないのではないか?

来季の浅田選手に願うのは、一試合でも多く、クリーンなプログラムを演じてくれることである。難しくなくても、綺麗でなくても良いから。もちろん、そのプログラムに3Aを含めてほしい。3Aを2Aに回避した時点で、バンクーバーの頃の自分に負けたと言えるのではないだろうか。「10代の頃の自分に、どうしてそんなにジャンプが跳べるのか、と尋ねたい」と浅田選手が言ったと、中継で塩原アナウンサーが言っていた。もしも、それが本心であるのなら、3年前に門戸を叩くべきコーチを間違えたのではないかと、私は思ってしまう。

もちろん、今更そんなことを言っても仕方ないのだが...。

とにかく、ソチではクリーンなプログラムを演技してほしい。そのためには、もっと力強い、氷をしっかりと掴んだスケーティングを、そしてジャンプを、取り戻してほしい。

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