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2012年2月

2012年2月13日 (月)

フィギュアスケートはモード系スポーツなのか?

4大陸選手権から明けて、テレビの情報番組を見ていたのだが、浅田選手の衣装変更に触れていた。衣装変更はそんなに重要なことなのだろうか?

確かに、SPでのパンツからスカートへの変更は、動きやすさ、跳びやすさという理由での変更というのだから、意味はあるのかもしれない。でも、そういう変更はもっと早めにすべきでは?とも感じてしまう。シーズン前から衣装の検討はしていたのだろうから、動きにくい、跳びにくい衣装はダメ出しして、もっと早く結論を出すべきだったのではないだろうか?

これが他のスポーツだったら、対応の遅さが叩かれてしかるべきでは?と感じる。

以前からフィギュアスケートの報道では、前向きなコメントが多いように感じていた。批判的な意見がほとんどないのである。衣装変更以外でいえば、浅田選手が3Aに挑んだことを前向きに捉えている。1位でなかったことを批判すべきとは思わないが、3Aへのトライアルを懐疑的に分析する意見があってもしかるべきではないだろうか?例えば、ジャンプ回数が少ないSPにまで3Aを入れるべきか否かとか。

もちろん、決定権は選手側にあり、コメンテーターがとやかく言う筋合いはないだろう。でも、リスクも明らかにし、予測される事態を考え抜いたうえで、勝負をみつめていくことも、スポーツ観戦の楽しさであるはずだ。NFLでは、そういう楽しみ方が徹底しているように感じる。NFLの公式サイトでは、試合前のそういう分析が楽しい(リンクはこちら)。

やはり、スポーツとは、批判的(クリティカル)な意見も必要なのだと思う。それは、単なるアンチとか無慈悲は批評とかとは違う。愛するスポーツの興隆や選手の活躍を願うからこそ、時には批判することも必要なのだと感じる。

その気持を持って考えると、フィギュアスケートは、いささかモード系の関心に傾いているのではないだろうか?それイコール、芸術性と無批判的に考えているフシがあると思う。確かに、演技の見栄えを考えればコスチュームは大切である。音楽や振り付けにマッチし、選手をより輝かせる衣装ならば素晴らしいことだと思う。しかし、本当に見るべきものは選手の動きであり、ポーズである。あまりに凝った衣装で観客やジャッジの目を奪おうとするのであれば、それは、時計やアクセサリーで品格を上に見せようとするのと同じではないだろうか。スーツにデジタル時計ではミスマッチかもしれない。でも、ロレックスをはめているから品のある人とは言い切れないであろう。お金持ちであることは、確かかもしれないが....。

別エントリーでの、ブラックスワンさんへのコメントでも記したが、私は、浅田選手の姿勢の崩れを気にしている。歩行の容姿(=歩容)の崩れたトップ選手は、彼女以外にも目にしたことがある。それだけ、股関節や膝に負担がきているのであろう。でも、仮にフィギュアスケートで芸術性が語られるのであれば、立ち姿や歩く姿勢は美しくなければならないと私は考える。普段の歩き方が乱れている選手が、氷上で美しく舞う、というのでは、イミテーションに他ならないではないか?選手のコーチが、そういう部分にまで気を配っているのか、そこがとても気になっている。

「フィギュアスケートを続けると歩き方が汚くなる」という意見は、私も耳にしたことがある。でも、背筋をピンと伸ばし、頭の重さに負けず、しかも膝やつま先に緊張を感じて歩くことは、「芸術」を語るのであれば大切なことである。正座をないがしろにした書家がいるのであろうか?

書家が書家たるゆえんは、そういう所作、姿勢にあるのだと思う。和服を着ているから書家ではないだろうし、高価な道具を揃えているから大家でもないであろう。フィギュアスケートも同じだと私は考えるのである。キラキラした衣装を着るから芸術的スポーツというのではない。身体をピンと引き上げ、その身体をもってなにごとかを表現しようとするから、芸術的と言われるのではないだろうか?

浅田選手について心配するのは、その道具たる身体の軸が緩んでいるのではないか?ということである。空中でのジャンプやスピンの軸は美しい。難易度が高い技には軸が感じられるのである。しかし、静止した時、あるいは何気ない滑走中にも軸がみられてこそ、見事な演技と言われるのではないか?平易な、ごく当たり前の仕草の中に違いが際立ってこそ、初めて秀でた演技となると思うのだが。

プログラムの基礎点や加点で選手間の違いを分析することは、とても興味深い。それはスポーツ観戦の楽しさだと思う。ただ、芸術とは、難易度よりも、平易な局面でこそ、非凡さが顕れるものなのかもしれないと、最近、考え始めている。キラキラしたモードよりも、芯のすっきりした”かたち”に、そのものの「らしさ」が見つける方が、幸せなのだと思う。

その意味で、浅田選手の課題は、3A以外にあり、それらは大きな壁に、今後はなっていくのではないかと感じる。世界選手権が終われば、いよいよオリンピックのプレシーズンである。彼女が欧米の選手達を凌いで頂点に立つためには、更にひと頑張りが必要なのかもしれない。

2012年2月 3日 (金)

モビリティーとクィックネス

日本時間1月23日のカンファレンス チャンピオンシップはペイトリオッツがレイブンズに23-20で勝ち、めでたくスーパーボウルに進出します。日本のプロ野球で喩えれば、パ・リーグのクライマックスシリーズを勝ち抜いて日本シリーズに出るようなものです。しかし、スーパーボウルは1発勝負。日本時間2月6日のNYジャイアンツとの1試合で全てが決します。この試合にかかる重みは相当なものと推察できます。

それで本論なのですが...NFL(アメリカンフットボールの米国プロリーグ)の中継を観ていて、”クィックネス”の重要性を教わったということです。

スポーツでクィックネス(素早さ)が大切なのは当然なのですが、今シーズン中盤くらいまでは、NFLのQB(攻撃の司令塔)のトレンドは、クィックネスよりもモビリティー(移動性)にあるように考えていました。

この動画(リンクはこちら)の最初のプレーなのですが、ブロンコスの背番号15番のQBティーボウは相手守備陣のタックルを振り切り、密集地帯をかいくぐって、半ば無理やりにエンドゾーンまでボールを運び、タッチダウンを奪います。このプレーで特筆されるのが、QBでありながらボールを長い距離持って運べる、ティーボウのモビリティーです。相手ディフェンダーのタックルを振り切って走るのには、ステップワークや上半身の捻りなどで卓越したクィックネスが求められるのは当然ですが、ティーボウのプレーでは、それ以上に相手のぶつかりを怖れず、果敢に走り切る勇敢さが、彼のモビリティーを支えているように感じます。

同じように、ボールを持ったらエンドゾーンへ向かって突っ走るQBとしては、イーグルスのビックが有名です。彼は前の所属チームであるファルコンズの時代から、圧倒的なモビリティーを発揮し、相手チームを悩ましていました。この動画(リンクはこちら)は、昨シーズンのビックの活躍ですが、ボールをエンドゾーンへと持って走るモビリティー(移動能力)だけでなく、超人的なクィックネスも兼ね備えていることを感じてもらえると思います。しかしながら、今シーズンのイーグルスは、期待されながらも8勝8敗の五分の成績に終わり、プレーオフに進出できませんでした。ビックが怪我で欠場した試合が多かったこともあるのですが、その他にも要因があると、私は考えています。

それは、身体機能で示す以外のクィックネスが、NFLのQBには求められているのではないかということです。

この動画(リンクはこちら)は、セインツのQBのブリーズがパスプレーでシーズン新記録を達成した試合のものです。1984年以来の記録更新ですので、この試合でのブリーズのプレッシャーは大きかったと想像します。それにも負けずに勝利と記録の両方をもぎ取るハートの強さがドリュー・ブリーズという選手の魅力だと、私は感じています。それだけではなく、相手ディフェンス選手達が猛然と迫り来るまでの、ほんのわずかな時間に、パスをキャッチできそうな味方選手を見つけ出し、正確にパスを送る冷静さも、パス攻撃に秀でたQBに共通する能力のはずです。この、一瞬で的確な攻撃(パスの受け手を探して正確にパスする)を為し得るのは、状況判断や投球動作というベーシックな部分で、卓越したクィックネスが備わっているのだと思うのです。相手の突進をかわすうちにバランスを崩したとしても、一瞬で姿勢を立て直し、正確にボールを投げるためにも、クィックネスはものを言います。それは、ビックのような華麗さ、ティーボウのような勇敢さほど見栄えはしませんが、アスリートにとってなくてはならない能力だと考えるのです。

私の大好きなペイトリオッツのQBのブレイディも、そういうベーシックな部分でのクィックネスに秀でている選手だと思っています。この動画(リンクはこちら)の2分25秒からのプレーを特に見てほしいです。ブレイディ(青のジャージの12番)が突進してくる敵ディフェンダーを何度もかわし、タッチダウンパスを投げます。ディフェンダーをかわす度に投球フォームに姿勢を直す動作のクィックネスは、特筆すべきものがあると思うのです。また、3分10秒のプレーも、味方(このプレーではD.ブランチ)がいるはずの場所へ間髪入れずに投げるクィックネスには、目を見張るものがあります。

昨シーズンは、この動画の対戦相手であるジェッツに苦杯をなめてペイトリオッツはシーズンを終えました。その時には、トム・ブレイディの時代は終わってしまうのではないかと感じたのです。ブレイディは決して、走れるQBではありません。動画でもわかるように、相手のタックルをかわしたり、紙一重の差でパスを素早く投げてしまう能力には優れていますが、ティーボウやビックのように、自分の足でボールを運んでしまうタイプの選手ではありません。砲台のように、味方に向けてボールを発射するパスプレーで勝負するタイプのQBです。しかしそれでは、パスの受け手を守備側がカバーできれば、攻撃が封じられる可能性もあります。あるいは、守備選手が猛烈なラッシュをかけてブレイディに襲いかかり、パスを投げる前にタックルしてしまえるかもしれません。やはり、QBも走れなければ(=モビリティーを発揮できなければ)勝てない時代になりつつあるのではないかと、昨シーズンの終わりには考えていたのです。

ティーボウは今年になってブレークした選手ですが、彼の活躍は、私の考えが正しかったことを示しているのかもしれません。また、今シーズンのポストシーズンでも、勝負どころで、意表をついたQBのランニングプレーが出ることを考えても、やはり走れなければいけないのかもしれません。それでも、最初に記したとおり、ブレイディ率いるペイトリオッツはスーパーボウル進出まで勝ち進んできました。やはり、彼の時代は終わっていなかったのです。現在のペイトリオッツの強さは、ブレイディが走らなくても強力に活路を開いてくれる選手達(もし、2月6日に興味のある人は、ペイトリオッツの87番を覚えて下さい)がいることが大きいと思います。でも、その大前提として、パスの出し手であるブレイディの、地味なクィックネス(パスを出す前の細かいステップ、姿勢が崩れてもすぐに正しいフォームへ立て直せる復元力)があることに気が付きました。

このアドバンテージは、大人のフィギュアスケートにも通じると思います。

例えば、スケーティングの際に、動足(=フリーレッグ)で氷を押して推進力を得ますが、押し終わったフリーレッグをすぐに軸足(=スケーティングレッグ)に戻すこと。重心が速やかに軸側に戻れば推力の減衰を押さえられますので、押し終わったフリーレッグを素早く戻すことは、スケーティングの伸びにつながるはずです。とても地味なことですが、そういう意識とスキル(氷上滑走で素早い動作をすることは、思うほどに簡単ではないです)は大切だと考えております。このような滑走時の押し終わりの足を素早く戻すというクィックネスは、クロスストロークでも同様です。フリーレッグを綺麗に伸ばすまで押し切り、そこまでいったらすぐにスケーティングレッグに戻すことは、基本のストロークでもクロスでも、あるいはフォアでもバックでも変わらないはずです。そして、そのためにはスケーティングレッグが基本のストロークではアウトエッジに、クロスストロークではインエッジに乗っていなければいけないと思います。

スケーティングそのものを見るのであれば、滑走速度や自在な動作は、モビリティー(移動性)の範疇に入る気がします。こういうスキルは大人でも上達が可能ですので、私は、大人のフィギュアスケートではクィックネスよりもモビリティーを追求すべきと考えておりました。強引な引きあいを許してもらえるのなら、高橋大輔のステップシークエンスや浅田真央のトリプルアクセルではなく、鈴木明子のスケーティングを、大人は手本にすべきという感じです。でも、伸びのある美しいスケーティングの前提には、フリーレッグの処理の巧さがあるわけで、要するにクィックにフリーレッグを動作できなければ、スケーティングにおけるモビリティーが発揮できないというのが、このエントリーで一番言いたいことです。

ジャンプについて考えても、踏み切りの姿勢に、いかに素早く、正確になれるかが成否を分けるのかもしれません。フットボールと違い、フィギュアスケートにはプレーを邪魔する敵側の選手は存在しません。しかし、陸上のスポーツとは違い、氷上という摩擦がとても小さい世界で、高速移動をしなければなりません。そうすると、慣性(運動を持続しようとする性質)が非常にやっかいになります。方向転回をする時、回転をする時などに、したい運動を邪魔するように力が働いてしまい、バランスを崩すことはよくあると思います。なんとなく思うのですが、バスケットボールやサッカーあるいはアメフトの選手が敵選手と競り合うように、私達も慣性という見えない敵と戦い、それらに打ち勝つように頑張る必要があるのではないでしょうか?もちろん、単に力で抑えるだけでなく、合理的な動作で無駄な慣性を生じさせないことも、その頑張りの一つですが。

それで、ジャンプについてなのですが、入りのモホークやスリーターンの動作を素早く、正確にすることで、余分な慣性を抑えることができるはずです。踏み切りでの失敗は、この慣性のせいでエッジに体重を十分に乗せることができなかったり、軸が曲がってしまうこともあると思います。ですので、踏み切り姿勢を素早く正確にとれる(ちょうど、敵ディフェンダーが迫ってきても素早くきれいな投球フォームに入れるブレイディのように)クィックネスは大事なのだと考えるのです。

また、プログラム全体で考えると、動作が機敏で無駄がなければ、時間的なゆとりが生まれます。私は”カルメン前奏曲”のプログラムを先生から頂いていますが、超...速いテンポで音楽が進みます。正直、なんでこんなに速い曲を選んで下さったのかと、先生に尋ねたい気分です。自分で選ぶのだったら、絶対に無謀だと却下すると思います。でも、速いと思うのは、それだけ自分の動作がのろいわけで、機敏に動ければゆとりが生まれるわけです。ならば、どうすれば機敏に動けるか?ということで、それには反復練習が欠かせないということになります。大人のスキルには限りはあると思いますし、サイズ(身長と体重)はフィギュアスケートにおいてはハンデになりますので、どこまでできるようになるのかは、わかりません。ただ、ビデオを見返したり、練習を繰り返したりしていると、結構余分な動作のために時間をとられている部分もあるなと感じるのです。この動作は、例えば開かなくて良いタイミングで手を開いてしまったり、上半身がグラグラしたりするというもので、重心移動があいまいなために起こるのだと思います。先ほどのスケーティング時のクィックネスにも通じるのですが、重心をどこに移すかがわかることで、氷上での素早い動作に近付けると考えております。そのためにも、適切な重心位置を覚える練習が求められるのですが...。こういうクィックネスを磨いて動作が機敏になれば、もう少しゆとりを感じながらプログラムができるようになるかなと、希望を持っております。

クィックネスを増すためのトレーニングは、特別なことは考えておりませんが、普段のスケーティング練習のそれぞれのメニューに、速めの動作でやってみるのを加えることにしました。例えば、アウトサイドロールの際に、以前は大きな半円を描くように5周滑るだけでしたが、その中の1周は細かく、ほとんどストレートラインを描くようにチョコチョコと滑るようにしました。同じようなのは、両足でのスネークでもできます。片足スネークはエッジチェンジするまでの間隔を自在にコトロールできるほどのスキルはないので、クィックネスもへったくれもないという状況です。同様に、インサイドロールも重心の乗り位置の確認と上半身のボディコントロール(グラつかないこと)が主眼になっていますので、細かい動作を練習する段階ではないです。でも、いずれは挑戦した方が良いだろうなとも考えております。

大人がフィギュアスケートに挑戦する場合、高橋大輔のような華麗なステップに近づくのは、ちょっと無理があると思います。でも、重心移動の素早さと正確さ、エッジコントロールの巧みさといった、「地味なクィックネス」は向上すると思いますし、そういうスキルがアスリートの充実度につながるのではないかと思うのです。もちろん、氷上という極限に近い世界で、難易度の高い動作に挑戦するのがフィギュアスケートの素晴らしさです。でも、そういう動作を可能にしているのも、動作を正確に、素早くできるスキルではないかと考えております。そういうスキルを獲得することは、おそらくは氷上だけでなく、オフ・アイスでも宝になるのではないかなとも、期待しております。

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