「親父の目」を覗いていたら、親父さんが視聴率のことを取り上げておられた。
おっしゃることは真っ当であり、反論の余地のない正論だと私は感じた。私は真央選手のファンであるが、一時期のフィギュア熱は彼女の人気に負う部分があったのは事実だと私も思う。でも、その人気がきっかけで、安藤選手、高橋大輔選手、鈴木明子選手、と多くの選手達を知ることができ、更に若い選手達の台頭や男子選手達の可能性をも知ることができたとしたらならば、「人気者」としての真央選手の功績は多大だったと言えないだろうか?
私自身が、フィギュアスケートを始めたきっかけが、真央選手であった。
幾度か記したが、2005年の中日カップを日本ガイシアリーナ(当時の名称はレイボーアイスアリーナ)に観に行き、そこでの真央選手のトリプルアクセルの迫力に圧倒されたのがきっかけだったのだ。親父さんの記事を読んであれこれ考えていたのだが、自分の経験も踏まえて思うに、選手の活躍を観て、”自分もやってみたい!”と思わせるのは、フィギュアスケートの素晴らしさなのだろう。
もちろん、誰もがそう思うわけではないだろう。観戦専門でフィギュアを楽しむ方々も多いだろうし、日本のスケート場事情は普及の面ではまだまだ寂しすぎる。でも、リンクで日々みかけるのは、懸命に片足で滑ろうとする子供達の姿である。少し慣れてくると、きまってスパイラルを試そうとする。上手な子達では、キャッチフットにチャレンジする様子も見かけることがある。一般の子供達のこういう姿は、私が滑り始めたばかりの、トリノ五輪の頃には見なかった。
トリノ五輪の後に、荒川さんのレイバックのイナバウァーの真似をリンクで、皆がしていることが話題になったが、あれは一過性のブームだったと思う。とても楽しい社会現象だったが、今でもリンクであれをする人はまずいないだろう(本気でイナの練習をするなら、もちろん別だが...)。
今の一般の子供達の、スパイラルへの本気度は、5年前のイナバウァー現象とは、ちょっと違うように感じる。ほんの余興でとか、お遊びでとか、流行だからというような軽さではなく、もちろん遊びにきているのだが、「できるようになりたい!」みたいな気持ちがあるのではないかと、傍目では思えるのだ。それでもスポーツと言うほどの必死さはなく、やはり遊びの一こまに過ぎないだろうが、ここのところに、フィギュアスケートの命があるのではないかと考える。
”レジャーで模倣できるスポーツ”
こういうスポーツは、あまりないと思う。いわゆるレジャースポーツ(スキー、ダイビング、ハイキングなど)の範疇にフィギュアスケートは入らないと思う。それに、レジャースポーツでは一流選手の真似を遊びですることはできないだろう。スキー場で上村愛子のエアの真似などしたら、周囲の迷惑だし大けがになりかねない。ゲレンデのコブにアグレッシブに挑む姿は真似できるかもしれないが...。でも、遊び(レジャー)目的で来たリンクで、真央ちゃんの真似ならできるだろう。スパイラルへの挑戦もそういう気持ちだと思う。リンクの中央付近で、両足のトゥを交互に突いてクルクル回っている姿や、なんとかスピンをしようとする姿は、今シーズン何度も見かけた。貸靴でジャンプする子達の多いこと!
そういう姿は、私達のようにフィギュアスケートをスポーツとして受け留める立場とは異なることは事実だと思う。私達は技術習得を課題とし、身体の限界に挑みながらそれへの突破にもがいている。はっきり言うが、遊びではない。
でも、スポーツを始めるきっかけは、遊びからというのは事実かもしれない。
空き地での野球や路上でのサッカー、草原での駆けっこから多くのアスリートが生まれたのかもしれない。だから、テレビで眼にやきつけた映像を、親に連れてきてもらったリンクでなんとか再現したい! そういう気持ちから、次代のスターが生まれないとも言い切れないだろう。
私自身にとっては、フィギュアスケートは最初から遊びではなかった。40歳目前にリンクへ行き、それから一カ月も経たないうちに、本物の浅田真央と出会ってしまった。そこから、フィギュアの世界に引き込まれ、あっという間に6年が経とうとしている。「辛い、止めたい」と何度思ったことか、今でも、「いつまで続けられるのか?」と自問自答し続けている。”辞められないでしょ?”と妻には言われているし、その通りだとも考えているが...。
おそらく...もしも、リンクで懸命に「真央ちゃんごっこ」を楽しんでいる子供達が、それじゃぁ本格的にやってみようか!と言うことになったら、フィギュアは遊びではなくなってしまうだろう。でも、一流の選手達の姿に憧れる気持ちだけは、一層、強くなるかもしれない。それは、フィギュアスケートだけでなく、どのスポーツにも言えることだと思うが。極めようともがけばもがくほど、一流への憧れは増すのがスポーツの素晴らしさだと思う。
その世界への誘いが、どのスポーツよりも強いのが、フィギュアスケートなのかもしれない。「自分も真央ちゃんのように!」と夢を持たせてくれるスポーツという意味で、本当に素晴らしいスポーツだと思う。中身はしょっぱいが...(笑)。アイスリンクの白さは、選手達の汗と涙の蓄積だろう、いや、マジで。。。。
テレビ視聴率の高さのおかげで、フィギュアスケートを知る人々は多くなった。それがきっかけで、レジャー(遊び)でリンクに向かう人々、子供達が多くなったのは、テレビ効果の貢献ではないだろうか?
リンク側でも、初心者教室やそこからステップアップした専門教室など、そういうレジャー目的の方々をつなぎとめる間口を充実させている。ただ、氷に触れる機会を提供する施設自体が少ないのが現実だろう。環境負荷の高い施設だとは思うが、天然氷に触れる機会が少なくなっている昨今だからこそ、人工リンクの重要性が行政に認識してもらえたらと思う。身近なレジャーの機会としても、アイススケートはもっと大事にされて良いのではないだろうか?
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