「下手は下手なりに頑張る」ということ
とうとう、その時が来てしまったかと思った。いつかは来ると覚悟していたが...。
本日の朝の陸トレでジャンプをしていた時、左膝に痛みが走り、力が入らなくなってしまった。フリップの踏み切りで2回転がどうしてもできない。氷上なら、きっとジャンプが抜けた状態になるだろう。
もう少し正確に記すと、踏み込んだ瞬間に左膝の内側に痛みが走るのだ。我慢して踏み切っても、膝から力が抜けてしまい、まっすぐに跳び上がることができない。トゥループの踏み切りと同じに跳んでも、左トゥを突く時にやはり同じ状態になる。なので、トゥループでも2回転はできなかった。
摩擦が効く陸上でそうなら、氷上ではシングルジャンプもできるか怪しい。もしかしたら、かなり辛いかもしれない。
自分の両膝の内側に変形があり、関節周囲の骨がすり減りつつあることは、このブログにも記したことがある。なので、筋トレで膝関節周囲の強化を行い、同時に減量も目指していた。今年の4月に84kgあった体重は、現在では78㎏である。でも、膝の障害は、その程度の減量では許してくれないようだ。今は、階段の昇り降りさえも辛くなっている。
整形外科の医師からは、痛みが走る動作は控えるようにと言われている。また受診し、実際の変形の程度を診て頂こうと思うが、フィギュアスケートを続けるにしても、パフォーマンスには影響が残るであろう。フリップやサルコウといったLBIエッジを使うジャンプが跳べなくなる事態は、覚悟すべきかもしれない。もちろん、症状の緩和を図り、再び跳べることを目指すとは思うが...。
来年のマスターズも、仮に出場しても、また負け試合になるだろう...。
頑張って、頑張って、頑張り続けて、これ以上頑張れないほど頑張っても、結局はああいう結果だった。それでも腐らず、夏を過ごし、秋を迎え、本格的なシーズンが始まった矢先のことである。実際のところ、左膝を壊したのは、今年のマスターズの前であったかもしれない。痛みを感じながらも、「5月15日までもってくれ」と祈りながら、練習を続けていた。福祉の現場へと転職し、馴れない介護の仕事に痛みつつも、練習を続けた結果である。
だから、私はあの演技に心底満足している。課題は残したが、あれが、私の、あの時点での精一杯だった。同様に、仮に、その時点で膝に故障を抱えたとしても、仕方なかったと思う。身体を酷く使う仕事であるし、それでも、私はフィギュアスケートを続けたかったのだから。
もちろん、来年へは、もっと質の高い演技を目指していた。
レフェリーから指摘されたことは、忘れていない。スケーティングはもちろん、エッジ管理に至るまで、改善を図っている。目的は、「足元をしっかりさせて、より綺麗に滑ること」である。クロスフットでのグラインドの無さも指摘されたので、脚をクロスさせながらもエッジに乗りつつ滑り続けるクロスの意識もテーマにしている。
とにかく、悔しかった。今年のマスターズは、非常に悔しい。
だけど、来年のコンディションについては、今年よりも悪くなるかもしれない。左膝に荷重できないとすると...おそらく、LFIとLBOには乗れないだろう。時計回りのフォアとバックのクロスのパフォーマンスにも影響することが予想される。ジャンプは、ループ以外は全てバツかもしれない....。
来年のマスターズでは、何を言われるか!? どんな点数になるのか...。考えただけでも嫌になる。ならば、出場を諦めるか...。それも、アリだと思う。
でも、ここからが! 私の戦いだとも感じている。仮に膝に故障があったとしても。仕事があるので過剰な無理はしないが、演技はできると思う。その演技がジャッジの目に適わないとしても、それは仕方ない。「下手は下手なりに頑張る」のなら、仮に障害(ICFの考えでは、障害は一つの個性であり、誰もが持ちうるものである)があっても、その制約下で頑張り続けることにこそ意義があるのではないだろうか。
スケーティングの難を、また言われるかもしれない。
もしかしたら、ジャンプでのエッジの不正を問われるかもしれない。
でも、それらの指摘を受け容れ、自分ができる限りで頑張ればいいのではないだろうか。不備を指摘して下さる、欠点を明らかにして下さるだけ、幸せなのだし、可能性があるということなのだろう。
「もしかしたら、真央さんも故障を抱えているのかもしれない」と道中、妻に言った。
「そうでなければ、あの不調は考えられないよね」と、妻は答えた。
自分が膝に障害を負って、初めて気が付いたことだ。もちろん、真相は知りえないし、真央選手は、彼女自身の戦いを負っているのだろうが。
道すがらの目的地は、福祉の大学の先生との会食であった。福祉の職を得た者として、どんなアイデンティティーを獲得していくのか?について、私も語らせて頂いた。結局のところ、左膝に爆弾を抱えつつも大事に滑り続けることも、答えの一つになるのかもしれない。
私は看護師である。そのことに誇りを持っている。
今は、福祉の現場で介護もさせてもらっている。だから、身体を痛めることも多い。
でも、だからこそ、痛んだ体でも頑張りたいと思う。私に身体を預けてくれる方々も、同じように頑張っていらっしゃるのだから。
膝を故障したことは、来年マスターズの敗北or不出場についての言い訳を得たという意味ではホっとしている。でも、ここからが、自分の戦いなのだと、思い始めている。
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