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2009年1月 7日 (水)

神様のひとこと

一昨日だが、プールでのトレーニング後にジムでストレッチをやっていたら、島田紳介が司会するテレビ番組をやっていた。マシンの音がフロア中に響くところなので、テレビの音はきこえず、ストレッチをしながらテロップだけを読んでいた。

どうも、ポップ吉村の思い出話をしていたらしい。

チーム・シンスケで鈴鹿の8時間耐久オートバイレースに参戦を決めた時、オートバイのチューニングではカリスマ的存在のポップ吉村が、マシン貸与を申し出てくれたとのことだ。当時も人気絶頂だった紳介だったので、仲介役がいただろうし、ヨシムラ側としても損をする話ではなかっただろうと、私は想像する。マシン貸与自体は、それほどの美談ではないだろうと。

でも、紳介が恐縮して「なんで自分のような者にマシンを貸して下さるんですか?」と尋ねたら、ポップがこう言ったというセリフが印象に残った。紳介によると、ポップは笑いながら言ったらしい。「あげることができないから、お貸しするんです。」

たぶん、紳介が求めていたのとは全然違う答えだと思う。紳介とポップとを結ぶ線が全然語られていない。でも...私は20年以上前に一度だけ講演を聴いただけだが、ポップらしい素敵な理由だなと感じた。たぶん、紳介が誰か、どれだけのネームバリューがあり、ヨシムラマシンを使用することでどれだけの宣伝効果があるかなどは、ポップにはそれほど興味がなかったのではないだろうか?それよりも、マシンを必用とするチームがあり、自分達のマシンを走らせてくれるかもしれない、だから、貸してあげる。あげることはできないけど、使って下さい、そんな感じだったのかな?と、テロップを読みながら想像していた。

もっとも、オートバイレースでは、転倒クラッシュという事態もあるので、貸与にもかなりのリスクを伴うのだとも思うが...。多分紳介にとっても、とんでもない、チューニングの神様からの贈り物だったのだろう。

この話そのものからは、あまり教訓めいたことを引き出そうとしても野暮だし、ポップ吉村の人柄を感じるだけで十分だと思う。新しい挑戦をする者にとっては、本当に神様のような人に感じられたのではないだろうか。

本論はここまでにして、思い出したので、20年前に聞いたポップ吉村の講演で印象に残ったのを少しだけ記します。

質疑応答で、会場から「なぜ、4気筒の4ストロークエンジンにこだわるのか?」との質問があった。それに対しポップは、4気筒ならば同じ排気量でも1気筒分を小型にできる。その分高回転でまわすことができるので、パワーが引き出せると何度も繰り返していた。この考え方は、ある意味私の原点でもある。

私自身はオートバイには乗らないし、エンジニアとはかけ離れた人生を送っている。でも、「タスクをマルチ化することで一回あたりの仕事の負担が減り、結果として仕事の効率はアップできる」という持論は、ポップのこの返答から来ている。大きな仕事をかかえた場合、最初から順にやっていくのではなく、仕事をブロック化して、(一人であっても)並行して進めていく方が能率が良いのだ。

なので、論文作成でも文献検討から始めて、「はじめに」から書き始める人を良く見かけるが、私はちょっと違う。どちらかと言うと、結論を想定しながら文献をあたり、結果の出し方を思案しながら方法論を練っていくやり方をしている。その作業をパソコン上で行えば、文章は自ずと作成されていくし、「はじめに」は、結論がまとまってから仕上げに書けば良いとも思う。

同じことは、フィギュアスケートのスキル向上でも言えるかもしれない。ジャンプを強化しようと思えば、スケーティングを頑張った方が良いと思う。これは、私の直感なのだが...。ジャンプ動作を考えると、踏み切りもランディングもスケーティングスキルに依るところが結構ある。また、スケーティング動作にもジャンプの動作と共通する部分(例えば軸の移動、膝や足首の使い方)がある。なので、ジャンプを跳ぶためにはどんな動作が求められるのか、それらをブロック化し、同時に高めていく意識を持った方が良いのではないかと考えている。スケーティングの練習中も、「ジャンプの時も似たような動作があるよな」などと意識しながら行っていくのだ。

あるいは、下肢筋力だけに頼らず、足の裏や股関節周囲、そして背筋(浅田真央の広背筋や僧帽筋は本当に見事だ)も使い、体中の様々な筋肉を同時に使って跳び、軸をまとめ、着氷できるようになると、更に効率の良いジャンプになると思う。ひとつの筋肉だけでなく、様々な筋肉を同時に、効率良く使うことで、パワーは向上すると考えるのだ。

紳介へのポップのひとことから、話をむりやりに自分の考えることへ持ってきてしまったが、源流はポップ吉村の言葉にあるということで、どうかご容赦下さい。本当に素敵で、熱い人だったと感じる。

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コメント

スキル向上に基礎はかかせないですよね。ヴァイオリンのボーイングはスケーティングだなあと、小塚君を見て感じた事があります。フィギュアスケートとヴァイオリンはとても似たものがあると、高嶋ちさ子さんや五嶋節さん、織田憲子さんも話されていました。

さっちゃんママさん、こんばんは。
コメントをありがとうございます。

>>スキル向上に基礎はかかせないですよね。

本当にそれは思います。
私の場合、大人からなので、どうしても足りないものはありますが、それでも、基礎訓練を一生懸命やった方が色んなことができるようになると感じています。

>>ヴァイオリンのボーイングはスケーティングだなあと

ボーイングというのは、弓使いのことですよね。
”ひまわり”さんという、一昨年の全日本以来お世話になり、このブログにもコメントを下さった方がいます。その方も、バイオリンとスケートの両方を習っていらっしゃるのですが、やはり同じことを言われていました...。ヴァネッサ・メイの弓使いと音の伸びから、そう感じるそうです。 そういえば! 返事出してない!!

高嶋ちさ子さん、私も大好きです。
ハスキーな声できさくに話し、あまりアーティストっぽくないのもいいなぁと、テレビを見て感じていました。

NDSグループの彼女のCM、ご存知でしょうか?
中京圏限定と、高嶋さん自身がブログで書いていた記憶があるのですが...。私は大好きなCMです。

http://www.nds-g.co.jp/nds/cm/interface2.html

CM拝見しました。青いドレスもよく似合っていて音楽も彼女らしくて素敵ですね。最近第二子を妊娠されて益々将来が楽しみです。そういえば、演奏家は40才までは若手、40才にならないとベテランではないそうです。スポーツの世界でも、桑田・清原・カズなど、40代まで現役を続けた選手の存在もとても励みになります。村主さんや中庭さんの挑戦も素晴らしい!そして、ねくすとさんもまだまだがんばってくださいね。

スケートの技術がジャンプに直結するというは凄く納得です。

うちの先生は、
ジャンプに入るまでのプレパレーション(準備動作)にもの凄くこだわっていて、

ちょっとでも、スケートが押せていなかったり、フリーレッグが曲がっていると
「ジャンプを飛ぶ以前の問題!!」と凄く怒られます。

そこで鍛えられたおかげで、
力ずくでなく、技術で飛ぶジャンプに少しずつ近づいていますし、安定するようになりました。

結局、基礎が一番大切で難しいんですよねぇ。

さっちゃんママさん、こんばんは。

お返事をありがとうございました。

>>青いドレスもよく似合っていて音楽も彼女らしくて素敵ですね。

本当に、素敵なCMだと思います。ガンジスという曲ですが、アルバムも買ってしまいました!

>>スポーツの世界でも、桑田・清原・カズなど、40代まで現役を続けた選手の存在もとても励みになります。村主さんや中庭さんの挑戦も素晴らしい!

コンディショニングの意識の浸透などもあり、スポーツの世界での選手寿命は延びているのではないかと感じています。村主選手の存在は、多くの中堅選手達の発奮材料になっているのではないかと思います。バレエの世界でも、私はシルヴィ・ギエムや吉田都さんと同世代なのですが、彼女達が第一線で活躍していることに嬉しさを感じています。

>>そして、ねくすとさんもまだまだがんばってくださいね。

どうもありがとうございます。
私の場合は、体重コントロールをどうするかが、目下の課題ですが、コンディションと相談しながら続けていけたらと思います。

今後のブログエントリー用に、自分の滑る動画を撮影してもらっているのですが、思った以上に体の丸みって出るものだな...と、ちょっと悩み中です。まるで、カーリングのストーンが氷上を滑っているような...。この体型でよくジャンプ(1回転ですが)できるな...と、我ながら不思議です。

とにかく、40歳過ぎても滑れるということで、頑張っていきます。よろしくお願いします。

yuujiさん、こんばんは。コメントをありがとうございます。

>>うちの先生は、
ジャンプに入るまでのプレパレーション(準備動作)にもの凄くこだわっていて、

実は、バレエと比較した時に、いちばん感じたのが、フィギュアスケートではプレパレーションが洗練されていないことでした。おっしゃる通り、跳んだりとか回ったりする事前の動作こそが大切なのだと思います。

>>そこで鍛えられたおかげで、
力ずくでなく、技術で飛ぶジャンプに少しずつ近づいていますし、安定するようになりました。


本当に、それが理想なのですよね。
フィギュアスケートは、バランスとタイミングとコントロールのスポーツだと思います。ある程度の筋力も必要ですが、バランスとタイミングが調和すれば、それほど力を必要としないのかもしれませんね。

そのためにも、踏み切り時のスケーティングは大切だと思います。ルッツ、またぎにならずにアウトエッジで滑るのにはどうしたら良いか、今、悩み中です。

>>結局、基礎が一番大切で難しいんですよねぇ。

難しいですね...しみじみ、そう思います。

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