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2008年12月31日 (水)

cheer!~'08年全日本選手権のまとめ~

印象的なシーンがあった。

大会3日目、シンクロナイズドスケーティングのFS競技での場面だ。東京シンクロだったと思うが、ウォームアップのスケーティング(シンクロの場合はこの時もきちんと隊列を整えて滑る。ここから審査は始まっていると聞いたことがある)が終わるところで、一人のスケーターが列から離れてリンクサイドに戻った。彼女もしっかりメイクをし、皆と同じコスチュームだった。

でも、彼女以外のメンバーで勝負は始まった。リンクサイドに戻ったスケーターは、控えのメンバーだったのだろう。それでも、衣装を整え、臨戦態勢でリンクに向かっていたのだ。これは、不思議なことだろうか?

団体競技なら、当たり前だと私は思う。スターティングオーダーに選ばれなくても、いつ出番が来るかもしれない。その時に備えて十分な準備をしていた選手がチャンスをつかむことも多い。舞台でも同じだ。メインキャストが怪我で出られなくなった時、来るかどうかもわからない機会を逃さなかった代役が、責務を果たした舞台上でエトワールに任命されるというドラマも、現実にはある。映画「エトワール」では、コンセルヴァトワール卒業のダンサー達が、いかに周到に準備してチャンスを待っているかを描いている。戦っているのは、リンクや舞台に立つ主役だけではないのだ。

ただ、フィギュアスケートの素晴らしさは、格別だと思う。競技であるために優劣をつけざるを得ないのだが、それぞれの選手達を皆で応援する空気で満ちている。できることなら、誰もが存分に力を出し切り、そのうえでジャッジを待つのが理想なのだろう。ファンはもちろんだが、選手達にも、他者のミスに喜ぶ気持ちは(心のどこかにあったとしても)、表に出さないフェアな精神があると感じている。これは、相手のエラーに歓声を上げたり、敵のプレーにブーイングを浴びせたりする文化とは異なるのではないか。もちろん、サッカーなどサポーターの文化で成り立つスポーツでは、ブーイングも許されると思うが

フィギュアスケートは、声援(cheering)の世界であり、支援(support)の文化とは少し違うと思っている。私は、鈴木明子選手の世界選手権代表選出を願っていた。なので、それがかなわなかったことが本当に残念だ。でも、村主選手の復活と安藤選手の粘りは、やはり賞賛するしかない。他の選手の評価を貶めてまで、応援する選手を持ち上げるのは、フィギュアスケートの文化にそぐわない気がするのだ。なので、私は明子選手をファンとして応援はするが、鈴木明子のサポーター(支援者)ではないと思う。安藤選手にしても、私は彼女のFSの演技が嫌いであるが、それでも応援はしている。好き嫌いと応援とは、私の中では別なのだ。

この気持ちは、「あなたに勝ちたい、でも、あなたも頑張って」というライバルに向けた気持ちと通じるところはないだろうか?

控え選手や代役の思いはj複雑かもしれない。誰かが怪我をしたり、自分よりも実力が劣ることがはっきりすれば、自分に出番が回ってくるかもしれない。でも、チームの勝利や舞台の成功を願わないメンバーがいるだろうか?たとえ控えの立場だとしても。 局所的には自分のチャンスを祈ったとしても、大局的には、自分の思いを押し殺しても全体の勝利や成功を願わずにはおられない、そういう立場にある人は、実際には多いのではないだろうか? 選手は出場してナンボとよく言われるが、実際には、その陰で涙を隠す人たちがいるからこそチームは成り立つことも真実だと私は考える。

だから、代表の選に漏れてしまった選手の方々に、応援の気持ちを込めて伝えたい。

あなた方も、世界と戦っているのです。あなた方が頑張らなかったら、代表に選ばれた選手達も安心して頑張れないでしょう。だから私達も、あなた方と一緒に戦います。 と。

代表選考は終わった。選ばれた代表の選手達が一人も漏れずに、ロスへ、バンクーバーへ、ハルピンへ向かってほしい。でも、戦っているのは、枠に入った数名だけではないのだ。彼らを見守りつつ、一緒に戦っている選手達がいることを、あるいはそういう選手達を応援している私達も戦っていることを、覚えていてほしいと思う。

シンクロの競技中、リンク上の他チームを応援しているライバル達がいた。ライバルの存在を心強く感じているのは、彼女・彼らかもしれない。シンクロだけでない、アイスダンスも競技者不在の心配を乗り越え、今年は3つのカップルで覇を競った。復活したペアスケーティングも、是非、そうなってほしい。

栄光はひとつに限られるのではない。舞台に立つ一人ひとりに栄光は輝いているし、その光は、スポットライトではなく、「ガンバ!」の一声から、あるいは一人ひとりが鳴らす拍手から発せられているのではないだろうか。

全日本は終わったが、私達の戦いはまだ終わらない。私達の代表が笑顔で演技を終えるまで、戦いは続く。そして、表彰台から日の丸を見上げる日が来たのなら、また新しい戦いが待っていると思う。

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コメント

私も鈴木選手にワールドに行って欲しかったです。
というより、世界中の人にあの演技を見て欲しいと
思いました。
私は安藤さんのジャンプが好きです。
絶好調の安藤さんのすっかとするジャンプが見たいですね。。プログラムは来シーズンに期待したいですね。(カルメンは良かったです)

再び ねくすとさん 良いお年を。。

ちっちさん、こんばんは。私のエントリーを読んでくださり、ありがとうございます。

>>世界中の人にあの演技を見て欲しいと
思いました。

ですよね! 本当にそう思います。
でも、4大陸選手権も、今ではヨーロッパ選手権なみに世界の注目を集めるようになっていると思います。まずは、この舞台で...そして来年は...!!

大田由希奈さんとはタイプが違いますが、明子さんもきっと、世界で愛される選手だと信じています。

今回の全日本では、世界選手権の代表が発表されるまでに結構時間がかかりました。隣の席の方と、「いっそのこと、3枠目は、SP安藤選手、FS鈴木選手で分け合えば?」と話していました。

>>絶好調の安藤さんのすっかとするジャンプが見たいですね。。

まだ、3月までには間があります。私は、結構期待しています。最難関の全日本をなんとかクリアしましたので、これからの時期は、プロ変更からわずか1ヶ月で本番に臨まねばならなかったトリノとは違うと思います。どん底から浮き上がる安藤選手は、結構強いところがありますし、今シーズン、ジャンプ自体はかなりキレていますので、あの曲を聴きこなして、自分のものにできる安藤選手を期待しています。

ちなみに、FSの曲は、弦楽器を聴いたら踊れないと思います。管楽器を聴く、特にストレートラインではリズムの頭拍を打つトロンボーンの音を聴くのがコツだと私は感じています。そこに、ステップの踏み出しをもってこれたら、ストレートラインはピタっと合うかな...と。

>>プログラムは来シーズンに期待したいですね。(カルメンは良かったです)

ちっちさんは、安藤選手にどんなプログラムを踊ってもらいたいですか...(笑)。カルメンは、会心のプログラムでしたね。

私は、イエローマジックオーケストラのライディーンのような、テクノっぽい曲も彼女には意外と合うと思ってます(どちらかというと、SP向きですが)。

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