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2008年5月27日 (火)

”先生”と呼ばれる者だからこそ

マスターズが明けた先週は、心底打ちのめされていた。

1月末の事故以来、ショックを受けるニュースが身の回りに続いたが、先週のニュースで動揺がピークに達した。予断を許す書き込みは慎みたいので、報道されたことについては記したくない。ただ、ただ、ショックである。

同時に、正直に思った。「明日は我が身かもしれない...」と。

現在のところ、私はクリーンに仕事をしていると思う。特に、訴えられることをした覚えはない。でも、私は思う。「先生と呼ばれることに慣れてしまったら、人は過ちを犯しやすい」と。特に男は、権力を持つことに畏怖の念を忘れたら、容易に堕落してしまう。権力を振りかざす対象を異性に向けたら、セクシャルハラスメントを、意図しないとしても、知らず知らずに犯す可能性はあるのではないだろうか。

多分、今は大丈夫だと思う。でも、5年・10年後の自分には、全く自信が持てない。祈るのは、永遠にペーペーの下っ端のままでいさせてもらえることだ。いつまでたってもうだつがあがらねば、容易に首を切られる時勢ではあるが、なまじの権力や権威は持たない方が自分のためだと考える。

今の私は、とても格好悪い。学生達と議論をしても負けてしまい、「自分が間違っていた」と頭を下げることもしばしばだ。もちろん、人を教える立場との自覚はあるし、努力もしている。でも、人に礼を言われると、ひどく恐縮して、手を振りながら「そんな...いいです」と愛想笑いをしながら後ずさりしてしまう。頭を下げられれば、負けじと自分も下げ続ける。学生にも、同僚にも、セールスマンにも、誰に対しても。すごく、格好悪いと思う。

でも、本音を言えば、そういう自分に安心している。これだけ格好悪ければ、よもや過ちは犯さないだろうし、そういうチャンスも巡って来ないだろうと。看護教育は、学生の内面に触れるデリケートな指導場面もあるので、言葉上のハラスメントには細心の注意を払っている。時には、一対一で学生と対峙せねばならない時もある。でも、それは臨床実習での特別な時間であり、プライベートでは、私はフィギュア以外では異性と接する機会は全くない。仕事とプライベートは、極力分けるようにしているし、仕事上の人たちも私のような変人とは、プライベートまでも付き合いたくないと思っているだろう。だから、救われている部分もある。

というのも、公金横領の始まりは、仕事上のお金を自分の財布で管理することだと聞いたことがあるからだ。これは、厳に慎まねばならない。仕事で得るものと、プライベートで欲しいものとを混同すること、これをしてはならないことは、プロフェッショナルの鉄則だと思う。社内恋愛を禁じないまでも、公にすることを憚る風潮もその意図からだと思うし、「商品に手を出すな」との決まりもそうだろう。あるいは、インサイダー取引を禁ずるのも、職務上有利な立場にある者(会社の上司や取引上の顧客)が商品の圧力販売をしてはいけないのも、公と私とを区別するルールの表れではないかと思うのだ。

他所の世界のことは、そんなによく知らない。ただ、私自身は、私的な世界に学生達を招く振る舞いは、慎みたいと考えている。

もちろん、自分の趣味の話を秘密にするつもりはない。マスターズ出場は、その時期に学生達に課題を出していた手前もあり、おおっぴらには言わなかった。でも、ある学生は、その課題を早々に片付けて部活の遠征に行くつもりと言っていたので、「私もフィギュアの大会に出るから、お互い頑張ろう」と伝えた。「私も頑張る。だから、頑張れ!」というのが、基本的なスタンスだ。だから、自分の頑張りは、無理のない方法で学生達にも伝えていくつもりではある。

でも、土俵はあくまでも、仕事の場にとどめねばならない。自分の出場する大会に職場の人達を招くか?と尋ねられたら、多分ノーと答えると思う。引退試合とか、とんでもない晴れ舞台とかなら許されるかもしれないが、自分のプライベートな場所に公を導いたら、やはり何かが崩れてしまう、そんな心配があるのだ。一度だけ、一般営業中に練習していたら学生達にカチ合ってしまったことがあった。リクエストがあったので、少しだけ滑走のコツを伝えたが、早々に練習を切り上げて失礼した。やはり、住む世界が違うと思う。

私は、看護という言語でしか、彼女・彼らとは話ができない。たとえ、フィギュアの話をするにしても...だ。「安藤さんが、”辛い時には空を見る” と言っていたよ」と学生達におしゃべりしたとしても、私が見ている先は、看護師になった時の彼女・彼らであり、仕事中に辛くなった時のために馬鹿話をするにすぎない。真央ちゃんが、いかに年長者に対して謙虚であったかを話したとしても、それも社会人になった時の参考になればと思ってのことだ。自分が練習で体験したことも、同様である。学生達も、「看護」という共通のバックボーンを意識できるからこそ、私の馬鹿話を聴いてくれているのだと思う。

それを、自分には魅力があるからとか、カリスマ性があるからとか、とんでもない勘違いをして、職業意識を逸脱したところで若い子女達を振り向かせようと企図したら...たぶん、そこで終わってしまうだろう。あるいは、巧妙に権威を用いて同様の企図をたくらんでも、やはり身の破滅を招くと思う。

決して、職場恋愛を否定はしないし、教師と教え子との恋愛を非難するつもりもない。ケースとしてあり得るとは聞いている。でも、私には難しいし、不器用で不恰好だからこそ、女性ばかりの世界でなんとか生き残ってこれたとも考える。私見であるが、看護の世界で男性がカリスマ性を持つことは、至難のことであるし、職業上の寿命を縮めることになるかもしれない。公の世界に徹して仕事しているからこそ、公でそれなりに生きられる。私は私として区別しているからこそ、間違いを犯さずにこれたのだと信じている。

だから...できれば、5年後、10年後もこのスタンスで行ければと思う。「先生、もっとしかりして下さいよ」といわれ続けてもいい。馬鹿にされても、厭わない。こんな頭でよければ、いくらでも下げ続ける。ただ...お天道様に顔向けできないことだけは、したくない。悲しいかな、そういう過ちを犯してしまったというニュースが、あまりに多すぎる。極論を許して頂きたいのだが、助平が悪いのではない。助平な欲求を公の土俵でなんとかしようと目論むのがマズいのではないか?そこだけは、気をつけねばと、自戒を篭めて考える。数年後に、私もニュースのネタにされてしまうのではないか?そんな危惧を覚えずにはいられない。

ただ、一つだけ救いというか、誇りに感じていることがある。

プロフェッショナルを育成しているという自負だ。看護教員は、将来、看護師として第一線で働くプロフェッショナルを育成する仕事である。そこは、一般の大学教員や学校の先生、スポーツ施設のインストラクターとは異なる。どちらが偉いとかという問題ではないが、プロフェッショナルの育成は、やはりプロフェッショナルにしか務まらないと信じている。だから、看護教員は、プロ中のプロであるべきだ。

少なくとも、この自負を失わない限りは、そうそう過ちは犯さないだろう。そんな余地が生まれるはずはない。プロは、人に認められてナンボの世界であり、常に観られている存在だからだ。場合によっては、個室で学生の個別指導もせねばならない。時には泣かれることもある。仮に、その場面でセクハラを訴えられたのなら、当然弁明は試みるが、基本的には職の継続を諦めると思う。看護教育の土俵で、学生からそのような疑義を訴えられた時点で、自分が至らなかったと観念した方が筋が通ると思うのだ。顧客である学生から退場を要請されるのであれば、プロとして進退を考えるのは自然なことだと思われる。もちろん、相互の誤解に起因するものであれば、その修復を努力することが先決だとも思うが。

結局のところ、私の存在は、とても脆弱な基盤に立っているのだろう。学生達や上部の方々の意図に左右される部分が大きいかもしれない。サラリーマンであるので、法で保護されている身分でもあるが、”先生”と呼ばれる者であるからこそ、弁えねばならない分もある気がする。でも、そういう危うさを忘れて、我が身は安泰との幻想を抱き、多くの方々の支援によって公に生かされていることを自覚しなくなったら...それこそ、身の破滅に至る危機ではないか?

敬愛する先生に、何があったのかはわからない。その先生から直接指導を受けたことはない。でも、同じ氷の上で同じ時間を過ごしていたので、私にとっても先生であると今でも感じている。

ただ、我が身を振り返りつつ、絶対に守らねばならない事柄を、改めて自覚した次第だ。もしも、報道が事実であると認められたのなら、この一点を先生から教えていただけたと理解する心積もりだ。でも、何かの間違いであってほしい。

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コメント

ああ、そうか。大学で看護教員をされているのですね。
教える立場ではないですが、私は看護師&助産師です。(OLを経てから資格取りました。)病棟勤務してた時は、臨床指導もいたしました。産婦人科で、男子学生に受け持たれてもいいとおしゃってくださる産婦・褥婦さんを探すのには苦労しました(笑)。
一年弱ですが、老人中心の病棟にも勤務しました。看護が、というより医療報酬の点数稼ぎとしか思えない検査・オペ続きの医療(病院方針)に嫌気がさして辞めましたけど・・・。

今は新生児訪問のみをやってます。病棟助産師をやっていれば、ある意味職人的に「無事産ませればほぼOK」でしたが、今の仕事は多分に(というかほぼ100%)メンタルな部分にかかわる内容なので、プロとしての資質・力量がより一層問われるような気がしています。時に一言一言を発するのが怖いです。
でも、不本意な医療にかかわることもなく、同僚に足元をすくわれることもなく、上司に媚を売る必要も無く(そもそもできない)、一匹狼的に仕事ができるのは、嬉しいです。

ブログに書かれている「報道」が何を指してらっしゃるのか具体的にはわかりませんが、それを反面教師的に受け止め、自分を律する姿勢を「ネット上で公開」されること自体がすごいことのように思えます。
お書きになっている通り、先のことはわかりません。
T大病院出身なので、大学がどれだけトラップだらけの場所かということもわかるつもりです。
最終的には、「自分を嫌いにならずにすむ選択」をし続けるしかないかな、という気がします。
ねくすとさんなら、きっと大丈夫ですよ。
長々とスミマセン。

ミトさん、こんばんは。お返事をありがとうございました。


ミトさんが助産師とはびっくりしました。産婦人科医の減少と少子化が社会問題となっている中、貴重なお働きをしていらっしゃるのですね。

>>産婦人科で、男子学生に受け持たれてもいいとおしゃってくださる産婦・褥婦さんを探すのには苦労しました(笑)。

実習生たちの話を聞くと、そのようですね。
私自身が母性看護の実習をしていた頃は、それほどの苦労はなく、何回か分娩(もちろん、正常分娩ですが)に立ち会わせて頂けました。

>>今の仕事は多分に(というかほぼ100%)メンタルな部分にかかわる内容なので、プロとしての資質・力量がより一層問われるような気がしています。時に一言一言を発するのが怖いです。

言葉は、現代の看護において大きなテーマになるべき課題だと思います。関わりそのものはできていても、関わり方それ自体を表現する言葉や関わりの中での言葉を選ぶのに苦労している実習生は多いです。ミトさんがおっしゃるような「ひと言の重み」を感じつつも、言葉を発していくことは、看護の現場では本当に大切だと感じております。

>>それを反面教師的に受け止め、自分を律する姿勢を「ネット上で公開」されること自体がすごいことのように思えます。

すごいというか...無謀というか...。
このエントリーには悩みました。ただ、スポーツインストラクターを含み、人にものを教える人間の不祥事のニュースがあまりに頻繁に出るのに対し、「自分もそうなるのではないか?」という危機感を抱いておりました。そうならないためには、自分の心の中でなんらかの整理をつけ、立ち位置を明確にする必要があると感じたのです。それで、自分のブログに思い切って表現してみました。

ブログはあくまでも私的な世界なので、「自分はこんな仕事を目指す」という私的なメッセージに過ぎませんが...。

>>T大病院出身なので、大学がどれだけトラップだらけの場所かということもわかるつもりです。
最終的には、「自分を嫌いにならずにすむ選択」をし続けるしかないかな、という気がします。

トラップだらけですね...(苦笑)。
今は、匍匐前進で襲撃に注意を払いながら少しずつ歩みを進めています。就任1年目で撃沈された同僚もいました。

私自身は、5年もてば良いと考えながらやっています。組織で動くことなので、ある程度は自分を抑えて仕事をしておりますが、縦割りの組織の中でどこまで生き残れるかは、やはり自信がありません。学生達には、「人相手の仕事では、思うように行かないことは多々ある」と言っておりますが、それは自分の今の仕事でも同じかなと感じます。

もしも、進退窮まったら、その時は臨床に戻れば良いと考えつつ、なるべく気楽に日々を過ごすようにしております。

ミトさんのお仕事のご成功を祈っております。
お母様方の援助者、相談相手として、幸の多い前途でありますように。

これからも、よろしくお願いします。

ニュース、私もショックを受けました。

私は、SEという職業で、対外との接点が少なく、
また、職場的には、人間関係に恵まれているし、幸い(?)出世するタイプでも、女性に持てるタイプでもないので(笑)
職場ではこういう事がおこる心配は今のところ(残念ながら)ないですねぇ。

むしろ、
システムの設計ミスで、会社に大損害を与えてしまう可能性があり、そうならないよう対応する方が頭が痛いです。

また、
女性の友達のほとんどがスケート関連なので、
こちらの方が気をつかう必要があるのでしょうけど・・・
元来脳天気な性格なので、余り考えていないなぁ(笑)。

会社の同僚は、スケートの試合に見に来てくれますし、一緒に旅行に行きますし、ブログにも書き込みが合ったりするので、
正直、少々プライベートに食い込みすぎている感もあるかなぁ・・・・と思っていますが、
今のところは、丁度いい距離感を保っています。

記事を読んでいて、いろいろと大変そうだなぁとおもいつつ、自分ももう少し気をつけなければ・・・・と思いました。

私も、ニュースの事は、間違いで合って欲しいと思っています。

yuujiさん、こんばんは。

コメントをありがとうございました。

システム構築のお仕事も大変だと思います。世の中がコンピューターで動いている現代ですので、トラブルを回避するために頭を悩ませていらっしゃることと推察します。

>>正直、少々プライベートに食い込みすぎている感もあるかなぁ・・・・と思っていますが、
今のところは、丁度いい距離感を保っています。

私が職場の人との付き合いが悪すぎるので、そういうお話を聞くと、「うらやましいなぁ」と思います。スケート靴を持たない旅というよりも、スケート関係者以外の人と旅行とか食事に行ってみたいです...(爆)。”公私混同”と”公でも私でも仲良く”というのは、やはり違うと思いますので、職場の仲間達とワイワイできる間柄というのは、やっぱり、「いいなぁ...」と思ってしまいます。

>>記事を読んでいて、いろいろと大変そうだなぁとおもいつつ、自分ももう少し気をつけなければ・・・・と思いました。

今日なんとなく思ったのが、人は、カネと異性と力で変わってしまうかな...ということです。悪い方向ばかりではなく、自覚や自信など良い方向にも変われるとは思いますが...。でも、「初心忘れべからず」といいますか、幾つになっても、駆け出しの頃のことを覚えていられたらと思います。だから、今回のマスターズデビューのホロ苦さ(何度も動画を見返したら、「結構頑張ってるじゃん」と思えるようになりましたが...)も忘れないようにしようと思います。

また、よろしくお願いします。


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