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2007年8月15日 (水)

片足で滑るということ

スケーティングについて何かを記せるほど、私は修練を積んではいない。それでも、フィギュアを始めて2年が経つ今について、備忘録を兼ねて記させてほしい。

子供の頃にも何度かリンクに連れて行ってもらったことがあるので、なんとなくは滑れたが、まさか大人になってフィギュアを始めるとは夢にも思わなかった。きっかけは幾つかあるのだが、病気のリハビリも兼ねて滑り始めたというのもその一つだ。たまたま、知人から先生を紹介していただく機会があったので、2年前にスケートを始めた時から個人レッスンを受けさせてもらえた。とてもありがたい幸運だったと感謝している。

大人愛好者の場合、滑り始めは教室からにして、個人レッスンは慣れてからの方が良いという意見もある。私は、その意見にはあまり賛成できない。というのも、教室はどうしても複数の生徒を同時に指導するので、進度を個別に合わせることができにくい。ストロークに難があっても、回数を重ねればクロスに進まざるを得ない。逆に、反時計回りのクロスができているのに、全体の進度の都合があるのでなかなか次に進んでくれずに足踏み、という場合もあるかもしれない。職場の方から、似たような悩みがパソコン教室でもあるとうかがったことがある。

一人一人の進度の違いは、ある程度フィギュアに慣れた後でも、もちろんある。今は私は教室にもお世話になっているが、ターンやステップは得意なのに、スピンは皆からおいてきぼりをくっている。でも、フィギュアを始めて1年もたてば、自分の得意不得意やその理由が段々と見えてくる。なので、自主練習で何をすべきかはわかってくるものだ。だから、教室で皆から遅れていても、先生が指導される内容は理解できるし、教室の後でそれを思い出しながら一人でおさらいすることも十分可能だと思う。むしろ、滑り始め、フォアのストロークもままならない時の方が自主練習は大変だ。その時期こそ、個人指導でインストラクターの先生にしっかりと支えていただき、正しい滑り方をきちんと教わった方が望ましいように思う。私自身、先生にしっかりサポートしていただきながらフォアやバックのクロスを練習した時分のことをよく覚えている。あの時に、片足でしっかり乗ることを教えていただけたのが、今でも幸いだと感謝している。

「片足でしっかり乗る」と記したが、フィギュアスケートを始めて最初の衝撃は、片足で滑るということだった。そもそも、両足を交互に蹴って滑る(いちおうフォアスケーティングらしきもの)のも不慣れなのに、クロスでは片足のエッジにしっかり乗らないと楽に滑れない。フラット気味で無理に脚だけクロスしても、カーブの中心への体の傾きがないので、エッジは空しく氷を削るだけでカーブを描いてくれない。なので、力任せに氷を蹴って少しずつ向きを変えていくことになる。これは、ひどく疲れる。

先生の指導や練習している選手達の様子を見て悟ったのは、フィギュアスケートは片足で滑るのが基本ということだ。スパイラルやスリーターンは言うまでもないが、何気ないストロークにしても、蹴り出した後をワンフットのスケーティングレッグでいかに長く保てるかがスケーティングの伸びにつながるようだ。お世話になった先生からは、一回のストロークでどれだけ長く滑り続けるかの競争を子供達にさせていると教えていただいたことがある。なので、私も片足でどれだけ滑れるかを一生懸命練習した。

最初の頃は、3秒も片足でいられなかったと思う。クラブの先生方がいらっしゃるすぐ前を、一生懸命片足で滑ろうとするのに、すぐにパタっと足が落ちてしまうのを見られるのがとても恥ずかしかった。もっとも、先生方は選手の指導にいらっしゃっており、私のことなぞ眼中になかっただろうが...。それでも、最低でもリンクの横幅(国際規格なら30m)、できれば縦の長さ(同じく60m)は片足で滑れないといけないと先輩方から言われていたので、それを目標に頑張ってみた。

経験的に感じたことは、片足滑走の最中はバランスを保つために上体をしっかりと緊張させないといけないこと。特に、頭と両肩がグラつかないように気をつけるのが大事だと思う。あと、靴の中で足の指をしっかり開いて靴底をつかむようにして、ブレードの傾きをコントロールできることも必要だ。エッジの乗り位置については、フラットでも、インでも、アウトでも真っ直ぐ進むことはできるようだ。もちろん、失速するとインやアウトではカーブを描くが、十分にコントロールできていれば直線を描ける。多分、エッジの向きを微妙に調整しながら、カーブを描かずに滑るように身体が自然と動いているのだと思う。良くわからないのだが...スミマセン。氷の上でも摩擦は少しずつ働くので、当然速度は落ちてくる。この時にも同側のエッジ上で微妙に前後の重心の位置を変えていくと、ある程度失速は防げる。フォアの場合は踵側、バックの場合は爪先側に乗り位置を変えていくと良いと思う。

手許の教則本(注1、注2)に共通して記してあるのは、目線の位置だ。不安だからと下を見がちになるので注意するように書いてある。私は、なるべく正面の遠くを見るようにしている。車の運転でも、遠くに視線を向けた方がハンドルは安定する。それと同じだと思うのだ。

片足で10秒くらい滑れるようになると、だいたいリンクの横幅は一回の蹴り出しでたどり着けると思う。ちょっと嬉しかった。多分、その頃だと思うのだが、フォアクロスの練習がとても楽になったのを覚えている。円の内側の足(反時計回りなら左足)のアウトエッジと氷が噛み合って、ス~っと進んでくれるのだ。そうすると、クロスする足(反時計回りなら右足)もゆとりをもってスケーティングレッグの前にもっていくことができる。まるで、電車がレールを走るように自然とカーブしていくので、とても楽しかったし、何より無駄な力を使わなくなったので、クロスの練習を長く続けられるようになった。そんな練習を続けているうちに、クロスの後に円の外側の足(反時計回りなら右足)のインエッジも片足で乗れるようになってきた。そうすると、更に楽にクロスができるようになった。先生からは、円をなるべく少ない回数で回れるようにと指導された。クロスの最中も片足で長く滑走するようにということなのだろう。

片足滑走の練習は、当然スパイラルにも応用できる。時々、体は柔らかいのにスパイラルができないという話を、耳にすることがある。私自身は相談されたことはない(男性にスパイラルを尋ねる人はあまりいないと思う)ので、実際のところはわからないのだが、片足滑走が安定しないのも理由の一つなのかなと想像する。実際、ノーマルのスパイラルポジションをとると重心は前方にいきがちになる。これでは、フォアエッジから外れてトゥにひっかかる不安が出てくるので、フォアで滑ることは難しくなる。滑れないから脚を挙げれないこともあるのではないかと思うのだ。なので、片足滑走でのフォアの乗り位置をきちんと覚えておいて、姿勢が変化してもそこに重心をもってくる練習ができたら、状況が変わってくるかもしれないと思う。教則本(注1)を読むと、重心を正しい位置に保つためには、足首の曲げを意識することが必要なことがわかる。

最近、教室で、まっすぐ滑ることの重要性を教えていただいた。スパイラルもそうだが、安定したスケーティングが豊かな表現の基礎となるそうだ。その時に教えていただいた練習法が、

(フォアスケーティングで)

両足スケーティング→片足フラットエッジでのパッセ(フリーレッグの膝を曲げて爪先をスケーティングレッグの膝の高さまで持ってくる)→スケーティングレッグの膝を屈伸させる→フリーレッグを前方へスィングさせ、そのまま滑走→両足滑走へ戻す。

バックスケーティングでも同様に行うが、フリーレッグのスィングは背中側(進行方向)へだったと思う。

現在は、自主練習でこれを応用したメニューを入れている。

フォアスケーティングでフリーレッグを前方にスィングして少し滑った後に、後ろパッセにして、アティチュード→アラベスク(フリーレッグの位置はかなり低いが)→アティテュード→後ろパッセで両足滑走に戻すようにしている。片足滑走でアティチュードのポジションをとると、スケーティングのエッジはインに入りやすい。なので、それを意識して重心をアウト側にとるとまっすぐ滑れるようだ。ちょっと難しい。

バックスケーティングでは、片足滑走の距離が十分でないので、フリーレッグを前後の両方でポジションをとることはできていない。これは、今後の宿題となる。

最近、衛星デジタル放送のJスポーツで、1999年のケリローションという大会の中継を放送していた。アメリカ代表対ワールド選抜の対抗形式の試合なのだが、最後がアメリカ代表ミッシェル・クワンとワールド選抜スルヤ・ボナリーの対戦だった。ボナリーの伸膝で片足着氷するバックフリップにも驚いたが、クワンのスパイラルの美しさには言葉がない。恥ずかしい話だが、クワンの演技をテレビで観たのは初めてだった。ネットでの動画は見たことがあるが。多くの人々がクワンを賞賛する理由が、少しだけわかった気がした。

注1 「図解コーチ フィギュアスケート」上野衣子・平松純子 著  成美堂出版 1984年

注2 「美しく舞うためのフィギュアスケートLesson」 山田満知子 著 MCプレス 2007年

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